塗装とは?塗膜とは?塗膜の形成・劣化について

屋根塗装・外壁塗装において【ただ塗るだけ】と思っている方が大半ではないでしょうか?

そもそも塗装も防水の役割があることを忘れていませんか?

屋根塗装・外壁塗装工事を行なう際は根本的な目的・意味をしっかりと理解しておかないと、結局金額や担当の営業マンの人柄などの抽象的な理由で判断し、予想だにしないトラブル・クレームに繋がることも多いです。

裏を返せば、塗装においての知識を全てではなくてもある程度理解しておくだけでも充分悲惨なトラブルを回避することが出来ます。

【耐久性が何年・価格がいくら】そんなことよりも、大前提として塗料がどのように塗膜を形成し、どのようなことで劣化していくのかを理解しておく必要があります。

難しそうに思うかもしれませんが【ここを知らない・面倒臭いからお任せで】となるお客様に沢山の粗悪な業者が群がってきます。

このページでは、弊社でも使用している塗料メーカーの公式ページも引用しながら塗装とは?塗膜とは?についてご説明していきます。

大日本塗料さんのページのリンクも貼っておきます↓

上の画像は、弊社でも良く使用している大日本塗料さんのEXTRAシリーズのページの一部を抜粋したものになります。

左側が一般的な塗膜に対し、右側がEXTRAシリーズの塗膜内の構造を分かりやすく図解にしたものになります。

そもそも塗膜とは紫外線との戦いが1番の課題となります。

図でも書いてあるように、紫外線が塗料内に含まれる酸化チタンを刺激し周辺の樹脂を分解・劣化させていくことを【ラジカル反応】と呼びます。

たまにラジカル塗料などと謳っている塗料がありますが、あれはそもそも表現が間違っているのでご注意を。

シリコン塗料においても、フッ素塗料などの塗料においても、その塗料の内部構造にどのような成分があり、どのような効果があるのかを扱う側は理解しておく必要があります。

塗料の成分を簡単に分けると主に【顔料・樹脂・添加剤・溶媒】の四つが挙げられます。

上の画像の塗料が仮に両方ともシリコン塗料だったとして、シリコン樹脂の入ってる量が全然違くても日本の法律上違法ではありません。

少しでもシリコン樹脂が入っていれば、シリコン塗料と謳い販売することが出来るのです。

これは、果物ジュースや料理などでも聞いたことがあると思います。

これが同じシリコン塗料でも、安い塗料と高い塗料との値段の差のカラクリです。

結果、建物の建材を守る為の塗膜が弱ければ紫外線に塗膜が破壊されやすく、劣化していくのがいくのが早いということがお分かり頂けると思います。


次は【塗膜】についてご説明していきます。

どんな塗料を選定しようと、その塗料を適切な塗膜となるように塗装出来なければ全ては水の泡・お金の無駄になります。

塗料とは、半生製品として我々塗装職人のもとに届きます。

塗料メーカーは耐久性・機能性を持った塗料を製造できますが、最終的に塗料を耐久性・機能性を持った塗膜として塗装出来るかは塗料を扱う職人の腕にかかってきます。

メーカーのカタログに書いてある耐久性・機能性のある塗膜にするには、塗布量・膜厚形成が非常に重要になってきます。

上の画像は、弊社でも使用している大日本塗料さんのEXTRAエポプライマー二液(溶剤)の塗料説明書になります。

説明書には塗料の塗装基準や使用上の注意事項などが記載されています。

二液タイプの場合は、調合法(主剤硬化剤の対比割合)も重要になってきます。

可使時間は、材料を調合してからそれぞれの条件でどれだけ使用可能かという時間になります。

可使時間を過ぎた場合は廃棄しなければならないので、無駄なロスを抑えるために一度に調合する量を調整する必要があります。

ここに書いてあるのはどれも塗膜を形成するには大事なのですが、ここでは画像真ん中あたりの【塗装法】(ローラー・ハケ使用の場合)に注目していきます。


まずは【希釈率】

規定の希釈率は5%~10%と書いてありますが、この希釈率は水性塗料・溶剤塗料全ての塗料において、塗料の持つ性能や耐久性の塗膜形成において重要な部分の一つなので、塗装工事の現場に、調合割合や希釈率を規定通りに測る計りがないのは論外です。


次に【標準使用量】

0.17kg/㎡/回と書いてありますが、この表記の意味は1㎡あたり1回塗りで0.17kgの量の塗料を塗ってくださいという規定になります。

これをどう規定通りに塗布するか調べる方法があります。

例えば、このようにテープなどを用いて1㎡の面積となるように区画します。

この面積に対し、0.17kgの塗料を作り使い切るように塗ればどのような塗布量になるかが分かります。

計算上では計算は合いますが、実際の塗装の現場では凹凸が多い外壁だったり、ジョリパットやリシン・スタッコなどの吸い込みが激しい下地に対しては使用する数量が上振れする場合もございます。

使用する塗料の標準使用量などはカタログに書いてあることも多いですし、塗料名を調べればネットでも簡単に出てくることも多いので、ご自宅の見積もりに書かれている外壁の数量に対し、1㎡あたりの使用量から塗料の適正使用缶数を計算することも可能になります。

もし使用缶数が違ったり、明らかに使用する缶数が少ない場合は注意した方がいいです。


次に【標準膜厚・ウェット管理膜厚】についてご説明します。

標準膜厚は別名ドライ膜厚とも表現されますが、簡単に言うと【乾燥した状態での膜厚】です。

逆にウェット管理膜厚は【塗った直後で乾いてない状態での膜厚】になります。

上の画像の塗料場合、塗装1回目の乾燥時に50μm(マイクロメートル)の膜厚とし、塗った直後の膜厚を100μmとなるように塗ってくださいとあります。

溶剤塗料の場合、シンナー(非塗膜成分)が溶媒となり空気中の酸素と反応し、蒸発し乾燥した状態で初めて塗膜となります。

この表記から分かることは、100μmの厚みのウェット状態から50μm分蒸発しながら結合していきますということになります。

この膜厚が形成できていないと、この塗料の適正な塗膜が作られていないことになります。

※水性塗料の場合は水(非塗膜成分)が溶媒となります。

この膜厚も調べる道具があります。

この道具は、塗った直後の乾いてない状態の塗装面に垂直に押し当て、ウェット膜厚がどの程度膜厚が塗布で出来ているかを測定する道具になります。

例えば、塗った直後に100μmの膜厚になるように塗布してくださいという場合、25/50/75/100のメモリの面を上から垂直に押し当て、100μm塗布出来ていれば100のメモリの下に塗料が付着し、100μm塗布出来ていない場合、塗料が75のメモリの下まで付着しているが、100のメモリには付着していないという結果になります。

※参考までに、この100μmがどの程度の厚みかといいますと、人の髪の毛の厚みが大体80~100μm程度といわれます。


上記で説明したのは、あくまで下塗り材を一例に出しての説明になりますので、ここから上塗りが二回塗装されることを想定した場合、トータルで300~400μm程度の塗膜が形成されることになり、そこまでの塗膜を形成出来て初めて、塗料の耐久性・機能性が完成されることになります。

もちろん、各下塗り・上塗り・塗装工程仕様によっては膜厚はもっと厚くなる場合もあります。

塗料のカタログに書いてある内容は、一般の様々な状況の戸建て全てで試験を行なっているわけではないので、最後はいかに塗料を扱う職人が経験と技術を駆使し、現状に合わせた塗膜を形成していく塗り方が出来るかにかかってくるわけです。


話が難しく、大変な内容に感じたかと思いますが、各塗料のカタログの耐久性・機能性を様々な現状の現場(築年数・建材の劣化具合・立地条件等)で十分には発揮させるには、最低でも上記の内容を遵守しなければ塗膜の形成は成り立たないといっても過言ではありません。塗装とはそれだけ難しい技術職でもあるのです。塗料自体はそもそも化学物質であり、扱う側もそれだけの知識・技術が無ければ、せっかくお金を払って依頼しても水の泡になるリスクが非常に高いということを是非覚えていてください。